住宅改修計画

要支援1でも移動には杖が手放せないとなるとベッドが必須となってくるが、退院当初、
母はベッドを使用していなかった。母の居室は、約一間180cm幅の畳敷き縦長6畳。
ベッドなんぞ搬入してしまうと、立ち回りが悪くなるというのが理由だ。
 
そこでとりあえず、立ち上がり補助の手擦りを置き、以前と同じ生活を目指すとなった。
だが、勝手知ったる家だからこそ、つい油断して骨折前と同じ感覚で動いてしまうのか、
敷居やじゅうたんの縁につまずいたりバランスを崩し、簡単に尻餅をついてしまう
 
危険は屋外よりむしろ室内にある思われ、やはり、レンタルでのベッドの利用が始まった。
また、その介護用品を扱う業者は住宅改修も手掛けていて、玄関上り口の踏み台と手摺りの
取り付けを行い、介護保険を利用しての住宅改修の見積りも依頼することになった。
 
計画は介護ベッドが必要になった時の備えとして、居室の畳3畳分をフローリング貼りへと変更。
そして、室内での車椅子移動に備え、居室から茶の間、トイレまでの段差解消のバリアフリー化。
その床高調整のフローリングの重ね貼り。更に、通じる部屋の扉を引き戸に変更するというもの。
  
改修案は手間も金額もかなり大掛かりなもので、当初は計画を聞くだけで終わっていたが、
<パーキンソン症候群>の診断と要介護2への区分変更が計画を実行に移す起点になった。
 
その改修についてケアマネージャーから指摘が入った。より優先するべき箇所があるのだと。
一つ門扉から玄関ポーチの間が飛び石敷きで車いすの移動に難があり、その対策が必要。
そして二つ目、ポータブルトイレをベッド脇に置くことになった場合、一間幅の部屋一杯に
用具が場所をとり、人の移動が窮屈になりすぎないかということ。
 
当初案は「とりあえず」と参考までに聞いてみた計画で、特にこだわりがあったわけではない。
だが飛び石対策は、業者に依頼しなくても日曜大工でやれる仕事であり、ポータブルトイレは
ベッド横に置かなくても、ベッドの真後ろ・縦列に置いてもよいはずと考え、返答してみると
「ならば、そうしますか」と案が通って行ってしまった。
 
間もなく実際に、ベッドに対しポータブルトイレを縦列に置き、使用を始めることになる。
そこでようやく、足腰の効かなくなった人間をベッドの後ろまで移動させるということが、
どれほど難儀かを知ることになり、ポータブルトイレはベッドの足元横に設置しなければ、
意味のない用具だと気づくことになる。
 
そして、この一間幅の縦長6畳は、そもそも、介護部屋としては使えない間取りだったと悟り、
せっかくの改装部屋も放棄せざるを得ず、母の居室を玄関脇客間へと移すことになってしまう。
その計画の最終決定が10月、平成24年師走はそんな工事に翻弄されることになっていった。
 

     露地奥にまた露地があり はやり風邪