母は痛みのために、自力で寝返りを打つことすら困難な様子だった。
ここから介護用オムツの使用が始まることになる。だが、寝姿勢のままでのオムツ排便などは
後処理を担当する側にとって戸惑いが大きく、母自身も、にわかに順応できるものないと言い、
その<局面>では車椅子でトイレに連れていくことになった。人も動物も体に痛みがある時は
眠って直そうとするのか、母もまたそのようで睡眠と起床の時間が全く不定期になっていった。
室内清掃のためのヘルパー派遣も改修工事で中断されており、介護そのものを目的とした
利用の場合、どのようなことを頼めるのか、ケアマネージャーに相談を持ち掛けたところ…。
訪問介護や訪問看護は、
1・食事・着替え・その他介助全般、いつ何を頼むか、時間と利用目的を決めること。
(見守り、待機などの単なる付添いは不可)
2・1回の利用は長くても1時間位まで、1日複数回利用の場合は時間を空けること。
(連続の利用は不可)
など、先ず、サービス利用の制約を告げられ、それでも対応しきれない場合には、
特別養護老人ホームの短期入所生活介護や介護老人保健施設の短期入所療養介護
いわゆる<ショートステイ>を活用するのだと告げられた。
<レスパイト入院>について、この時の私はまだ知識がない。急性期病院で入院を打ち切られ、
自宅での看護が困難な人に対し、家族の負担軽減のため健康保険で療養入院をするというもの。
自宅近くにリハビリテーション科を備え、レスパイト入院も可能な療養型の病院があるのだが、
この時に教えられていれば、たとえ期限付き入院であったとしても申し込んでいたに違いない。
しかし、運ばれた総合病院では制度を導入していなかったためか、ケアマネージャーからは、
あくまで、介護保険利用の相談だと思われてしまったか、この時点で提案されることはなく、
対応を考えていくにあたり、レスパイト入院が選択肢に入ることはなかった。
慌ただしく工事が進む中、トイレ介助でベッドから出る以外、殆ど寝たきりとなった母の
療養生活が続いて行くことになった。往診の痛め止め注射もさほどの効果もなく、やはり
治るまでには、長期戦の覚悟が必要だった。
バリアフリー工事の諸々の対応や、母の介添えを難聴の父一人に任せることはとても出来ず、
私は休職し、実家への泊まり込みを開始した。とりあえずは、短期入所・ショートステイの
申し込みが必要なのだろうと思われた。
予備校の冬のサルビアくらくらする