医療過誤法律相談

県弁護士会ホームページ・取扱分野「医療事故・患者側」の一覧から順番に問い合わせてゆき、

県内でも医療事案の取り扱いが最も豊富だという事務所に2週間程の待ちで、相談日は3月に

入ってからの予約となった。料金は初回が1時間5000円、2回目以降は30分5000円。

 

これまでのセンター側の発言録は重要であるが、それを覆してきているので、

それ以外の<材料>として、カルテの写し・診療明細・デイサービス連絡帳。

そして、代理人が送付してきた通知書そのものである。

 

これらの内容を整理すると「(処置を受けた二日後も)格段変わった様子がなかった」とする

通知書の発言と、その二日後の利用が満足に行えなかった連絡帳の記載との間に矛盾が生じる。

つまり、二日後の時点では既に状態悪化の兆候が出ていたと観なければ状況的に辻褄が合わず、

責任の可能性を認めていた以前の発言こそが、施設責任者としての当然の見識が示されていた。

以上の主張を認めさせるアドバイスを聞くのだ。

 

尋ねた事務所は、こじんまりした7階築オフィスビルのフロアを借りきる落ち着いた雰囲気で、

私より一回りほども年長で柔和な面持ちの弁護士とは、余計な緊張もなく相談に入っていけた。

 

相談の結果…。

このデイサービスのセンター長は自分の言葉に責任を持たず、理学療法士として見識も低く、

提供されたサービスは粗悪で誠実さに欠けていた。そう証明することと、そのセンター長の

措置によって、母の右大腿部が悪化したと証明するのは別の作業になる。

 

「責任は認められない」と賠償を拒否された。そこで裁判に持ち込み、主張を認めさせ、

損害賠償を勝ち取るには、訴える私達に「施設の落ち度により状態が悪化した」とする

<医学的見地に基づく立証責任>が求められる。それが可能か、費用回収のことも含め

判断しなければならない。

 

<医学的見地に基づく立証責任>とは、医師の診療記録を用いた医師による証明ということ。

つまり<痛み>とあっても、右大腿部との関連性も不明瞭な連絡帳のメモ書き程度のものは、

医学的な立証の材料足り得ない。最終的には当事者の証言に頼る必要に迫られ、内容証明で

それを否定してきている以上、診察を受けた病院のカルテが判断の基準となる。

 

 弁護士は理路整然と淡々と分析を述べてゆく。そして、そのカルテに目を通しながら

「 裁判はやってみなければ分からないが、決して低いハードルではない」と前置きし

「通常の民事裁判の勝訴率は7割程はあるが、医療事案はそれが2~3割まで落ちる」

「難しいのですよ…」と。

 

法律に関して素人とはいえ、私の齢五十を超え、世間も人の二面性もそれなりに見てきて、

おおよそ、その辺りの察しはついていた。だからこそ、このデイセンターとの交渉の際は、

立会人が必要と直感し、センター長から正直な証言を引き出すことに苦心してきた。だが、

改めて現実を告げられ<理不尽>という感情を抑えられず、抗っている。

走り去る装甲車を竹槍をもってでも止めんと、まとわりつく歩兵の如く。

経過する相談時間を横目で気にし、そんなことを考えながら私は弁護士の話を聞いていた。

 

     貨車見たし枯野にたぎるもの見たし