契約解除

面会の約束は5時半、民生委員Tさんは私と待ち合わせ、センターに行く。

ケアマネージャーとは現地集合となった。当日は昼過ぎから気温も上昇し、

すっかり真夏の日和。7月も、もう下旬となっている。

 

提示する資料や記録を揃え、いざ出発といった矢先、携帯が鳴った。着信を見て胸がざわつく。

てっきり待ち合わせのTさんかと思ったが、そうではない。掛けているはあの代理人弁護士だ。

「当方(デイセンター)はそちらとの契約を終えることにした、本日の面会は取り止めて頂く」

などと。

 

新センター長と面会の約束を交わし一週間。途中、ケアマネージャーが加わることがあっても、

特に変更の話などはなかったが、約束の時間直前になって、ここで代理人が口を挟さんで来た。

一気に髪の毛までが逆巻いてくる。

 


 

「本日の面会は新センター長が指定した時間で、こちらはそれに合わせ準備してきた。

 民生委員も手配済みで直前になり、そんな一方的な通達は受け入れられる訳がない」(私)

「これは決定したことで、とにかく行くのは止めて頂く」(代理人)

「契約の解除など私は了承しないし、される理由もない」(私)

「契約書・契約の終了の条項を適応させての決定である」(代理人)

 

事業所側から契約を切るための条件は2項。

・料金の支払いが2か月以上遅延し、催告を受けても支払われない場合。

・利用者が事業者に対し、契約を継続し難い<不信行為>に及んだ場合。 

前センター長の処置により、右大腿部の痛みが増し、障害を負ったと、

苦情を申し立てたこと自体に、この2番目を適用するというのである。

 

「精算を済ませ、介護計画の作成を依頼するのだ、もう代理人は関係なかろう」と切り返すも、

「気に入らなければ裁判でも何でも好きにしろ」と言わんばかり、代理人は取り付く島もない。

そもそも、契約の終了は利用者側からでも事業者側からでも、文書の通知をもって成立すると、

条項の前提に記されており、特に事業者は理由を示した文書を通知しなければならないとある。

 

「その類の文書を受け取ってはいない、頭ごなしに行動を拘束されるいわれはない」(私)

「こちらの意思は伝えたし、文書はこれから送る、契約は終了したと理解して頂く」(代理人)

怒髪衝天。無理が通れば道理が引っ込むと言わんばかり、これ程の怒りを覚えるのは

全く以て、いつ以来か。これまでも散々と弄ばれてはきたが、それもここに極まった。

 

これ以上は時間の無駄でしかない、もう私はあんたの言葉には一切拘束されない」

私はそう言って電話を切った。

 

       蛙田の沸騰したる一軒家