強攻の背景

このデイサービスはフェイスブックを通じ、業務PRや活動の発信を行っており、その投稿から

一通りの人物相関が確認できる。社長自身が投稿に精を出すデイサービス法人用アカウントでは、

感謝の念と純粋な人間性をもって介護事業に身を捧げる情熱や使命感が繰り返し発せられている。

それらは、自分で自分の言葉に陶酔しているかのようで、直接、当人に対面した立場ともなると、

印象の乖離が余りに大きく、見る度に何とも言えない気分になる。

 

名刺の提示すらも拒否され、何の成果もなく終わったと思われた新センター長との面会、

それまでの電話応対でも、告げられたのはありふれた苗字のみともなれば、その応対に

どれ程の違和感を持ったとしても、彼についての<情報>など得る術もなかった。だが、

対面し面識を持ったことで、投稿画像から交友関係の確認に繋がった。

 

彼らのアカウントページには、前センター長と新センター長、二人の交友録が残されていた。

この二人、デイセンターのスタッフとして同僚となるその以前からの友人同士だったようだ。

新センター長の私への応対ぶりについて、いちいち合点のいかぬことばかりであった訳で、

それが、何とも解り易い理由となって判明したのだが…

 

自らが提供したサービスについて、法的な責任は免れそうだと高を括っていられる神経だけは、

どうあっても私には理解できない。今回の母の一件から彼らが、どういった教訓を得たものか、

私はモニターを続けていくのだが、屈託のない交流からは、それを伺い知ることはできない。

 


 

「彼らの友情が適切なものであるのならば」敢えて、その前提をもって話すと…、

自分が赴任する前年に本当は何があったのか、自分が引き継いだ事とは一体何だったのか。

新センター長が前センター長に対する信頼を維持し続けるには、その確認が不可欠となる。

そして、前センター長が包み隠しなく、正直に起きた事実を告白することができるのなら、

その結果、彼らには当然、導き出される教訓が残って然るべき、と私は考える。

『自分達にリハビリセンターの管理などは時期尚早だった』そのような教訓が…。

 

代理人弁護士の氏名を検索すると、法律事務所のホームページの他に、掲示板や質問サイトでの

この弁護士個人に対する書き込み痕がヒットした。法律に関する質問や相談に答える類ではない。

呆れる程に下品で辛辣極まりない罵詈雑言を浴びせられた書き込み痕だった。事ここに至るには、

相当な恨みが募ったということだろうが、そんな掲示板への投稿が問題解決に繋がるはずがない。

まして名指しともなれば、書いた側に塁が及ぶことすら危惧される状況だが、その往生際も悪い

ナンセンスな書き込みを、私は到底笑う気にはなれなかった。

 

その代理人から契約解除を通知する内容証明が送付されたのは、新センター長との面談日より

更に10日程後。書面の日付も面談日より一週間後になっていた。契約解除の理由は代理人の

電話での説明通り、前センター長の処置で母が傷害を負った。と訴え出たことそのものを挙げ、

「利用者側が契約を継続し難い不信行為を行った」との条項を適用させていた。

 

内容証明で来ることは予想されていたので、当初は受け取りを拒否することも考えてはみたが、

そうしなかったのは、このデイセンターが私達に<不信行為>のレッテルを貼り、契約解除の

暴挙に及んだ事実を、記録として手元に残しておくべき、との考えを優先させたからであった。

 

      蟻地獄 覗くや情けあり顔に