'14 12 10

 

2014年

12月

10日

在宅介護延長

介護が始まり数日たったある日、母が急に息苦しさを訴えることがあった。

今にも息が止まりそうで、私の手を取り「今日まで、本当にありがとう」などと言い出す有様。

寝たきり同然になったとはいえ、僅か数日で呼吸停止寸前まで陥るとは、どうにも不可思議で、

『何なんだ?』とただ狼狽するばかり。

 

『冷静に』と自分に言い聞かせて、状況を見渡し直してみたところ酸素欠乏ではないかと、

エアコンの空調を嫌う締め切った母の部屋の暖房、酸素が欠乏状態になっているのではと。

窓を開け放し空気を入れ替えると、呼吸は次第に落ち着きを取り戻し事なきを得たものの、

切羽詰まった素人介護の危うさを思い知ることになった。私は母が発する声に過敏になり、

昼夜の区別がつかない介護生活になっていった。

 

見学を兼ね、説明を聞きに行った介護老人保健施設では、希望者に対し、個別リハビリが

用意されていたが、支援相談員からは「『安静が必要』と医師からの診断が出ている以上、

先ず、治すことを優先させる、リハビリは回復の様子を見てからになる」とされた。

 

つまり、入所はあくまで家族の負担軽減のためと、割り切る必要があるということだ。

また、短期入所は日数制限があり、自宅に帰れるまでは地域内で施設の移動も必要に

なるかもしれないとも聞かされた。

 

工事が終わる頃、母の両足はすっかり肉が削げ落ち、右足は左より更に細くなってしまい、

魚の鱗がまとわりついているかのような弛んで乾燥した皮膚が大腿部から下を覆っていた。

人の体の脆さを改めて実感させられ、事態の深刻さを突き付けられた思いがした。

 

体を動かす感覚を呼び戻させようと、痛みのない左足など上下運動を促してみると、

母もそれに応えてきた。干からびた足を弱々しくも慎重に、ほんの僅かでも動かす。

たとえ、たった今痛みが消えたとしても、自力歩行が難しくなったことは明らかで、

補助をする手に母自身の危機感が否応なく伝わってきた。

 

短期入所に踏み切るか、自宅で介助を続けるかの選択に悩んだ結果、私は当面の間、

休職を延長し在宅での母の介添えを続けていくことにし、両親との同居が始まった。

父の神経に障るような少々の粗相をしでかしたとしても、もはや、母からの小言を

聞かされることはなかろうと思われた。

 

    しこしこと五十路はじまる赤まんま

  


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