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2014年

12月

20日

父の生活、母との接点

結婚当初は共稼ぎだった両親、私達兄弟が産まれると母は専業主婦になった。食パンの昼食と

風呂の準備、洗濯、ゴミ出し、味噌や醤油、洗剤など母に頼まれた日用品の買い物が定年後の

父の役割となる。運転免許は持たない。そんな父が母の骨折で家事全般を一人で担うことになった。

 

調理は母からレシピを聞いて再現を試みたり、宅配弁当を活用したりと奮闘するも、どうも

上手くいかない。結局「味付けは作り手の自分の口に合わせてもらう」となっていくのだが…。

 

既に歯が全て抜け落ち総入れ歯の父は、この頃から嚥下(食物の飲み込み)にも難が出始めており、

食事中に唐突に咳き込んだりする。一方、母は右上の奥歯3本につき部分入れ歯を使用しているが、

食べ物のそしゃく・飲み込みに問題はない。

 

「お父さんの料理は私が作っていたのと比べて、倍柔らかく倍味が濃い」

愚痴を聞かされるのは専ら私の役割で、父本人に向けられることはない。

父自身、何も察していない筈なく、私が介護に専念すると聞くやいなや、

「それなら、母さんの食事もお前に頼む、自分のことは自分でやるから」

となり、判で押したような父の一日がより一層、規則的に。

 

起床5時半。朝食6時。

朝刊に一通り目を通した後、買い物など所用の外出は午前中に済ませ、

母が好みそうもない菓子など、適当に買ってきては枕元に置いていく。

昼食12時。1日おきの入浴2時。夕食の支度3時。

 

炊事場の使用が私と重なると、私の真後ろに立ち、作業が終わるのを待っている。

「鬱陶しいんだけど」と言うと、3歩程下がりはするものの、待つのは止めない。

猫舌のため調理後、いったん温度を落ち着かせ、夕食5時。 就寝8時。

 

父にとっての至福は、この生活時間が厳守されることにあった。家族以外の対人関係、

そんなものは、その至福を乱すただ疎ましいだけの存在、ということになってしまう。

趣味は読書。自室には、読み漁った文庫本が手を付ける隙もなく煩雑に積まれている。

 

一方、母は痛みのため、一日の殆どを眠っているか、まどろんでいるかといった状態。

何か助けて欲しいことがあり、父の気配に「お父さん、お父さん」と呼んではみるも、

そのか細い声は父には届かない。

 

互いに、はかなく切れかかっている夫婦の接点を繋ぎ止めようとしているのか…。

五十路を迎え単身の身で実家に戻った私にとって、少々切なく映る光景だった。

 

    わけもなく誉められているおでん鍋

  

Cat


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