行政の口添えがあって、ようやく連絡をとってきたデイセンター。
センター長は「会談の手筈を整える」と約束をした。副社長は会談要請に「返事する」と答えた。
しかし、彼らの言葉が実行されることはなく、加えて、センター長と社長・副社長の言うことは
何から何まで違っている。
「自分の処置が状態悪化の原因になった可能性がある」センター長が先に示した自身の発言、
今も、その認識に変更や取り消しがないかどうか。先ず、それを確かめなければならないし、
「マッサージ・揉み解しではなく、評価・触診だ」と言うセンター長に母は納得していない。
「コリをほぐす」と言って揉まれた。それは確信であり、母には母なりの決着が必要なのだ。
「本社との事後交渉を前に、当事者として母の訴えを聴きに来てもらいたい、対本社会談は
その後、日を改めて設定してもらいたい」会談の日程を聞くセンター長にそう要請すると、
センター長は特に条件など付けることもなく「解りました、伺います」と返事を返してきた。
そして当日「午後1時」との約束に時間通りの訪問。そこまでは良かったのだが…、
何事も一筋縄ではいかないのがこのデイセンター。この日の訪問はセンター長一人。
そう決め込んでいた私を嘲笑うかのように、センター長は二人連れで門扉に立っている。
弁護士でも連れて来たのか、と思ったが、そうではない。その付き添い男、初対面だが、
顔に見覚えがあった。
背丈170㎝弱の私よりも、まだ少し低く、50歳台半ばの中肉男性。
ついて来たのか、連れて来たのか、一緒に立っているのは社長である。
このトラブルに見舞われ、デイセンターの情報を求め、ネット検索を掛けた。そこで、
社長の存在の確認を得た。その記憶が目の前にいる男の顔と一瞬にして符合したのだ。
前回はセンター長から忌憚のない証言を引き出すため、会談を敢えて私と一対一の形式にした。
だが、本社との会談においては立会い人は必須。社会福祉協議会に紹介されたNPOへ依頼に
行くつもりだったが、この日は「当事者同士で」と提案した手前、立会いなしで待機していた。
今回は役所監督の下だからと、私には打ち合わせ以外の想定が全くなく、安心して構えていた。
不意を突かれ、呆気にとられつつも、門を挟み二人の男と暫し正対しながら、
我に返った私は『気を入れ直さねば』と自分に言い聞かせるばかりであった。
ひとつずつ挨拶に来る柚子湯の柚