社長面談の夜は、まんじりともせず明かすこととなった。
センター長と社長の同席に拘ってしまった如何ともし難い己の優柔不断さ。いや、しかし
「約束とは違う、出直せ」と追い返し「はい、分かりました」と素直に従う相手でもない。
あのまま社長を返してしまい「会談を拒んだのは先方(私)」とされれば、それはそれで…。
翌日「保険会社に取り次いだので、待機するように」と副社長から電話が入る。
自身の対応の有り方、この事態に至っていること、どう思っているのか正すも
「もう、何を話しても平行線だから」と取り付く島もなく、通話は一方的に打ち切られた。
しかし、2月に入り一週間経ってもそんな連絡は来ず、ここでもまた、催促をする羽目に。
その催促を受け、連絡を取ってきたのは保険の代理店で、
「現在、保険会社とセンターとの間で、賠償の対応について協議・検討中」とのこと。
「協議・検討中」とは、センターがこの交渉の窓口に代理人を準備していることだと、
2月も2週目に入った頃、その代理人の弁護士だと名乗る男からの電話で判明する。
「保険会社の担当から連絡が来るはすではなかったのか…」と面を喰らっていると。
「これは交通事故の示談などと違い、保険会社は示談交渉権を持たない」と男は言い、
「契約者(センター)が手続きを進める中で、保険会社とやりとりすることはあるが、
保険会社が対外的(保険金を払う相手)な窓口になることはない。弁護士の自分は
法的な観点からアドバイスを行い、賠償責任があるかどうかは、契約者が判断する」
そんな説明を加えた。
センター側はそれを知らなかったのか、知っていながらわざと適当にあしらっていたのか。
双方の認識を確認し合い、その一致・不一致を踏まえた上で、社長は、症状の因果関係が
記された診断書の提出を条件としたのではなかったのか。それを何故今更、弁護士などを
代理人に据える必要があるのか。
聞いていくと、この弁護士が代理を受任したのは2月に入って早々で、もう既に、
センター長からは事情の聞き取りも済ませているということ。つまり、副社長が
「保険会社からの連絡を待て」と連絡をよこした時には、センターはこの方針で
準備を進めていた最中だったということになる。
それならばそうと、利用者・契約者のこちらには一言断った上で。それが<筋>ではないのか。
『やはり、空返事でかわされていたのだ』そんな苦々しさが込上げてくる代理人の登場だった。
法の庭 女の影にいもり浮く