要介護者ばかりが集まる午後の枠があると、センター長に薦められた火曜日と木曜日。
6月に入ったその火曜日、午前のサービスが終わる頃合いを計い、デイセンターに電話を掛けた。
すると、応対するスタッフが「この4月でセンター長は交代しています」などと言うではないか。
唖然とするばかりであったが、今日は午後から運良く、前のセンター長の出勤予定があるのだと。
「伝えたい要件があるので、今の責任者に替ってもらいたい」と言うと、
「承ります」と送迎から戻ったところの新任センター長が電話口に出た。
新センター長は新年度4月より、このデイサービスのスタッフに加わり、
前センター長は本社勤務となり、外回り中心で行動しているということ。
「昨年の未払い料金を担当したセンター長へ直接支払いたいと、母が希望している」と言うと
「本人が出勤すれば、連絡を入れさせる」と新センター長は私の連絡先を控え、電話を切った。
店舗開設が前年の6月ということだった。なんと一年経たず、責任者を代えてきたことになる。
母に対し、私に対し、また代理人を経由し、残してきた発言の整合性を総括させる。
これまで散々裏切られてきた相手に、今更、そんな事を試してみる気になったのも、
相手が<センター長>という責任ある立場に就く者との前提があったればこそだが、
それ自体が崩れていた。
案の定というべきか、結局この日もまた、連絡が返えされることはないのであるが、
つい数時間前に、応対した新センター長すら何も言ってこない。だが、逆にそれが、
予定通り、前のセンター長が出勤してきたことの<証>と私には思われた。
新センター長の今朝の私への応対には、警戒心など特におかしな雰囲気はなかった。つまり、
本社も前センター長本人も一連のトラブルに関し、代理人に送付させた<回答書>をもって、
完全に私達の排除を完了できたと高を括り、新センター長には引き継ぎも何も行うことなく、
すっかり枕を高くしていたのであろう。そんな有り様であればある程に、自らが陥っている
思考停止や現実逃避の愚かさに気付くこともなく、たとえ料金精算に関しての話であっても、
私からの連絡は<無視対応>を決め込むしかない、そんなことになってしまうのか…。
<料金の直接払い>は私にとって、前センター長と対面するための云わば、切り札なのだ。
そのカードを切ってしまった以上、この機を逃さず一気に畳み掛ける他ない。と思う一方、
新センター長の人となりも読めない中、慌ただしい終業の時間帯に乗り込み、思惑通りに
事が運ぶはずがない。と思案が錯綜した結果、やはり、想定外の不安要素を払拭しきれず、
この日、私はこれ以上の行動を自重することにした。
本社から言われるがままに、連絡も放置しているのであろう。そんな新任の責任者に
残された記録を示し、こちらの立場を理解させる。なんとも気重な手間がまたひとつ
増えたことになる。その機会をどう作るか、それが当面の課題になるに違いなかった。
一存で猫の出てゆく四月尽