予定通り面会に出向く方針に何の躊躇もない。待ち合わせ、合流した民生委員Tさんには
「今日は横で話を聞いていてもらえばよいです」とだけ伝え、一緒にセンターに向かった。
現地集合のケアマネージャーに「Tさんと先に行っているから」と電話で断りを入れると、
「センターから来ないでくれと連絡が入った、自分はこれ以上関われない」と返してきた。
「Tさんが来てくれてるのは、あなたの提案あってのこと、顔を出すのが筋ではないのか」
そう諭すも「事業所の意向に逆らってまでは出来ない」と結局、このケアマネージャーも
事の顛末を見届けることはなく、土壇場で面子から外れることになった。
私自身は自分の行動に間違いはないと、腹はくくれているが、センター側の対応次第では、
多少の悶着は覚悟しておかなければならない。Tさんには申し訳のない思い一杯であるが、
当の本人は、さほど気にしていない様子で「それでは行きましょう」と受け流してくれた。
センターの間口に立ってスタッフを呼ぶと、新センター長が直ぐに応対に出てきた。
想像通り、その風貌は前センター長と同様、30歳に届くかどうかといった若者だ。
「契約を終える、面談は中止にせよとの代理人からの指示、お引き取りを」(新センター長)
「契約解除の手続きなどは何も完了していない、現時点ではまだ契約状態にあることは明白、
施設の責任者として自ら交わした約束については、自らの判断で誠実に対応されよ」(私)
「自分は雇用されている立場、代理人弁護士からの指示には従うしかない」(新センター長)
「とりあえず、名刺ぐらい頂けないものか」(私)
「何も渡すな、何も受け取るなと言われている、何か置いて行かれたとしても自分は観ない、
それをそのまま、代理人に手渡すだけだ」(新センター長)
バリケードを張る警官のように足を肩の幅に広げ、両手を腰の後ろに組み、姿勢を崩さず、
私達の前に立ちはだかる新センター長、施設内への入場さえ一歩たりとも許さない構えだ。
新センター長、私、そしてTさん、膠着状態の三すくみ。夕刻のむせ返る空気までも
停滞させるのか…。滲み出る汗の流ればかりが、だた鈍く首筋にまとわりついていた。
藁帽子飛んでわらわら訣れける