考察

「考察」とはいえ私の場合、彼等のネット上の発言や事業運営の方向性を読み解き、

判断するといった範囲になるが、それでもその検索と閲覧で私達利用者の思いとは、

また異なる事業者側の視点を知ることになった。

 

母を直接担当した初代センター長と後任センター長、理学療法士としての彼等が

現在運営する事業案内を見ると「通所」方式のデイサービスという形態ではなく、

初期投資が少なくて済む「訪問」介護リハビリセンターということになっており、

それに加え、訪問看護やセミナー事業部などを併設させていることが特徴である。

 

訪問看護は事業の範囲を医療保険にも広げ、経営を安定させるためであろうし、

理学療法セミナーは当初、同業の知人の企画を手伝う範囲だったようなのだが、

今では、自らが主催し指導するセミナーまであって参加が呼び変えられており、

起業に関心を示す若いセラピストを取り込んでいこうという思惑も見て取れる。

 

この「セミナー」を備えることで自分達も含め、若い起業家が熟練者から経験や技を

学べる環境を整えた。とのことだろうが、起業といっても彼等の場合、僅か一年程の

おぼつかない「センター長」の経験があるだけ。その経験の浅さや利用者への安全を

軽んじていたとしても、独立後の営業面での採算性までを当たり前に判断するならば、

あの時点での起業は時期尚早という他なく、決断できる要素などなかったはずなのだ。

 

だが実際に彼等は、訪問看護も含めサテライトまで展開させ、順当な運営を見せているし、

彼等の去ったデイセンターも直ぐ別の後釜が据えられ、今も平然と営業が続けられている。

さては、どんな条件が揃ってくれば、あちこちでそんな事が可能になってくるものなのか。

と、改めて彼等のネット上での交友関係を見直してみた結果、そこに一人、私も当時直接

「交友」を持った人物が居り、それが交代人事で母の担当に就く要介護認定以降二人目の

ケアマネージャーだったのだが…。

 


このデイセンターの者達は、契約相手である母からの苦情申し立てを無視しながらも、

ケアマネージャーが SNS に個人のアカウントを持つと見るや、空かさずその確認を

取り付け、投稿があれば待ってましたとばかり、耳障りの良い言葉を並べ愁眉を送る。

そして、その「抜かりなさ」こそが経営ノウハウと、社長から直接手ほどきを受けた

にわか仕立ての管理責任者が、 SNS で自分を売り込みながら事業展開を図っている。

残されていたのは、そのような足跡だった。

 

急速な社会の高齢化と在宅医療を推奨する国の方針で介護事業は成長産業となった。

介護サービスの利用はケアマネージャーが要介護者の担当に就き、事業所の手配や

利用状況の監督を行う「介護制度と地域包括ケアシステム」の下で成り立っている。

つまり彼等にとっての介護事業とは、地域事情に精通し何十人もの利用者を抱えた

ケアマネージャーという「営業担当」が元々用意されていて、その取り入り方さえ

間違わなければ、確実に「客」が紹介され、連れてきてさえもらえる大変魅力的な

業態、ということだったようだ。

 

時流や制度上の旨味に釣られ、管理者としての経験値や資質も未知数な若者をおだて上げ、

一足飛びに「センター長」なんぞに抜擢し事業拡張を目論む者、また、キャリアアップに

目が眩み、分不相応な要請に安直に喰い付く者、更には、一気に起業へと駆られる者まで…。

 

彼等はその未熟からの失敗に対しても、謙虚に検証を重ね、相手の納得を得ながら清算する。

そんな真っ当ではあるが、手間の要る手続きは踏まない。失敗など経験値「肥し」のひとつ。

同じ轍を踏まなければ良いだけのことと割り切り、後腐れが残る位なら別の土地へ鞍替えし、

新規のケアマネージャーを取り込み、仕切り直す方が余程手っ取り早い「成長」に近づける。

そのような了見が、この「制度」の中に紛れ込み、正当化され、まかり通ていた。

 

裏を返せば、看護やリハビリの医療分野にまで門戸を広く認可を与え、実績の如何に関わらず

参入が促される「建付け」であるからこそ、この高齢化社会の在宅ケアに対応しうる事業所の

配備が、全国津々浦々に行き渡る、という側面もあるのかもしれない。とはいえ、実際に見事

「外れくじ」を引かされてしまった立場としては、この際、追加しておきたい問題提起もある。

そんな訳で次回もう一度、私がこの一件から得た教訓なども含め、事の総括を行いたいと思う。

 

     ラ・フランスざらついている者同士