低気圧

元来、母にはパーキンソン以前からの懸案として、喘息の持病がある。
急激な気圧の変化に自律神経が対応できず、一旦発作が出てしまうと、
常備する気道拡張薬を服用しても数時間は発作との格闘を強いられる、
そもそもがそんな体質なのである。
 
その母も齢を重ね、発作時の躰への負担も増し、酸素吸入器の備えを
迫られていたところだったのだが、奇妙なことにパーキンソン発症を
言われ出した頃から、その発作が現れなくなってくる。
 
主治医にさえ訝しがられ、明快な理由が示されなかったこの現象だが、
母にすれば、終生悩まされ続けてきた喘息からの解放である。当初は
願ってもことと、ただ短絡的に捉えていたのだが、浮かれてばかりも
いられない要因があることに、早晩気付くことになる。
 
季節の変わり目から夏の夕立や台風の接近まで、空気を搔き混ぜながら
不吉な低気圧が接近してきて、発作を誘発するような要因が整ってくる。
そういう時に限り、パーキンソン処方薬の効能が、まるで効かなくなり、
躰の動きがビタリと止まってしまうのだ。
 


平成27年2月初頭、その日も等圧線の刻みが細かい西高東低冬型の気圧。
一日中気温上がらず、母の反応も朝から鈍く、躰の動きも止まったまま。

となると、本来なら発作が襲来していたはずと理解する訳である。
 
それでも、躰が気圧に慣れるにつれ、体調も戻ってくるものなのだが、
この時は翌日になっても復調の気配なく、状態は悪化していくばかり、

食事も全く摂れず、発熱39度、心拍上昇、意識まで混濁し始めたかと

思うや、閉じた目蓋が完全に開かなくなってしまう有様。
 
もはや、気圧ばかりがこの変調の原因でないことは明らかだったが、
今更、町医者外来に並ぶなど悠長なことも言っておれず、またもや、
救急搬送を余儀なくされることに。
  

低気圧のせいと安易に構えた挙句、転倒骨折に始まり三度目の救急搬送
「感染症には違いないが、インフルエンザではない」とされ、緊急入院、 

抗生剤と点滴での処置が続き、母が覚醒するのは搬送日から丸二日の後、

最終的には「パーキンソン病の急性増悪、尿路感染症」との診断結果に。

そして、その入院はほぼ一か月間も続いてしまう。

 
落ち着いた二週間のレスパイト入院ですら、母にはせん妄の症状が出た。
誰よりもそれを不安がっていたのは母自身だった。認知機能については
異常ないとされながら、句会に戻れない状況がもう二年近く続いている。

レスパイト退院からひと月余り、ようやく日付け感覚が修正されてきたと
安堵していた矢先だった。そこに、二日間の昏睡を強いられた挙句の入院。
何もかもが、また振り出しに戻されることの避けられない事態であった。

 
       跨ぎしは二月の樹影母の形
 


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コメント: 1
  • #1

    aki (日曜日, 03 12月 2023 01:14)

    この様な書込大変失礼ながら、日本も当事国となる台湾有事を前に 日本の国防を妨げる国内の反日の危険性が共有される事願います

    今や報道は無法国の代弁者となり、日本の国益は悪に印象操作し妨害、反日帰化の多い野党や中韓の悪事は報じない自由で日本人の知る権利を阻む異常な状態です。

    世論誘導が生んだ民主党政権、中韓を利す為の超円高誘導で日本企業や経済は衰退する中、技術を韓国に渡さぬJAXAを恫喝し予算削減、3万もの機密漏洩など数知れぬ韓国への利益誘導の為に働きました。

    メディアに踊らされあの反日政権を生み、当時の売国法や“身を切る改革”に未だ後遺症を残している事、今も隣国上げや文化破壊等、

    日本弱体と利益誘導に励む勢力に二度と国を売らぬ様、各党の方向性を見極め、改憲始め国の成長と強化が重要で、しかし必要なのは、
    日本人として誇りを取り戻し、世界一長く続く自国を守る意識だと多くの方に伝わる事を願います。